連続ブログ小説「10/10の夢旅人」
●前回のあらすじはid:seigiyaiba:20050528をどうぞ。
第8話「男の“謎”」
「よし、着いた着いた」
僕達がようやく辿り着くと、そこはすでに人がわんさかいた。
「うわぁ、黒山の人だかりだなぁ」
「そうだな…っといたいた、おーい!」
ポンちゃんはそう言って、手を振った場所に向かった。どうやらポンちゃんのバイトの人が席を取っておいてくれたらしい。
「まだ来てないすか!?」
「おう、まだ現れてないぞ。
お、なんだ、あんたも一緒か。久しぶりだなぁ」
「どうも」
僕はとりあえずあいさつをした。一応この先輩格の人とは面識もあるし話したこともあるのだが、如何せん僕は人見知りなところがあるので、面と向かってというのは苦手なのだ。
「ところでさあ、お前この前…」
「しっ!来たっぽいぞ」
ポンちゃんの話をさえぎり、僕は言った。
体格は中肉中背…と言っても全身が服で隠されているのでよくはわからないが。身長は結構高め。だいたい180くらいか。そして顔は…、
「おい、アイツの顔、お前に似てないか?」
そう、僕から見てもその顔は僕に似ていたのだ。僕はその男と目が合うと、何だかただならぬ気分になってすぐさまその場を離れた。なぜだかわからないが、僕はあの男とは関わってはならないような気がした。
その夜、ポンちゃんは帰ってこなかった。たぶん仲間とあのまま飲みに行ったのだろう。
今、僕は一人だ。一人というのは慣れているが(まあそれも虚しい話だ)、今日は何か落ち着かない。なんだろう、このゾッとした気分。
とその時!
ドンドン!!
ドアを叩く音だ。これか、これなのか?
恐る恐るドアを開けると、そこには僕がいた。いや違う。似ているけど僕じゃない。ていうか、僕なわけない。
あの男だ。でもなぜここがわかったんだ。仮にも僕のうちじゃないんだぞ。
「やめろ」
え、コイツ喋ったぞ。
「当たり前だろ、人間なんだから」
なんだ、僕の心の声が聞こえてるのか、そう思おうとしたが、「これも読まれている」そう思ってやめた。
ところで、
「一体、何をやめろというんだ」
「その今やっている予想をやめろ、そう言ったんだ」
とその時、玄関の開く音がした。ポンちゃんが帰ってきたみたいだ。
「あ、あんた、何でうちにいるんだ!?」
むしろ嬉しそうな口調で言うポンちゃん。しかし男は「チッ」と舌打ちをして帰ってしまった。
「何であの人、うちにいたんだ?」
「さぁ…ただ『予想をやめろ』とか言って帰っていったけど」
「なんだよ、サインとか貰わなかったのかよ〜」
相変わらず呑気なヤツだ。でも何でそんなことを言ってきたんだ…?